すべからく四般の事を了すべし

「一男子と作らんと欲すれば、すべからく四般の事を了すべし。財よく人をして貪らしむ。色よく人をして嗜ましむ。名よく人をして矜らしむ。勢よく人をして倚らしむ。四患既に都て去る。豈に塵埃の裡に在らんや」(邵康節)

「一男子」とはあるが、全ての人間に通じる話であると思う。

四つのことが挙げられているが、全てのことに言えるのが、「依存してはいけない」ということではないか。あってもよいが必要以上に執着すると、あらぬ方向に進んでしまうということだろう。

ここで難しいのは、執着してはいけないと言うと、それを避ければ良いだろうと考えてしまうことだ。本来、お金や性欲自体が悪なのではない。名誉や勢いのある人や組織があってはならない訳ではない。むしろ良い方向に作用することもある。ここのバランス感覚が難しい。

「あっても良いけど深入りは禁物だよね」と考えることはできるのだが、実際それを手に入れたときに冷静にそう判断することができるのだろうか。

そういうときに必要になるのが「自分にとって何が大事なのか」分かっていることなのではないか。その基準があれば余計なものを削ぎ落して、欲をある程度制御できるかもしれない。

「中庸」というものの重要性は昔から言われていたが、どうしても偏りが出てしまうし、それに気付けない。そもそも概念としての中庸はあっても、実生活において中庸とはこういうものですよと示すことはできない。

一人ひとりが生きる中で見つけていくより仕方がないのだが、どうしても人間はこれが答えだよというものに縋ってしまう。巷に溢れている情報もその類のものが多い。

やはり固定化された答え、正解はないということを肝に銘じて、実践の中で絶えず調整するよりほかないのかもしれない。

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